いつでも夢を・永遠要憧憬
2023, AKAKA Art Publishing,Inc., 赤々舎, Jiazazhi
Design : Kaoru Kasai, Yoko Nakamoto
ウーロン茶のことを想うと、
なぜか僕はきまって冬の北京空港に降り立った時のことを思い出す。
1980年代の北京空港は今とは違い、かなり小さな空港だった。
当時そこに降り立つと暖房に使う練炭や石炭を燃やしたような香りが
いつも微かに漂っていた。そして、その香りを嗅ぐたび、
中国にまたやってきたんだという静かな喜びが、ふつふつと湧いてきた。
当時の古いロビーのガラス窓越しに、
ボーッと白く煙った、遥か遠くの水平線を見つめていると、
自然に「遥か感」という言葉が僕の頭に浮かんできて、
その度、その言葉をそっと心の何処かで呟いていた。(序文より)
上田義彦